合縁奇縁~去る者は追わず来る者は拒まず


<キュルルルル……>


と、その時突然お腹が鳴った。


怒るとお腹が減るとはよく言ったものだ。

一人マンションで飲み直そうと思っていたが、冷蔵庫の中身を思い浮かべてみても何も浮かばない。

こう言う時、あれこれ考えるのは時間の無駄だ。

そうだよ、外で飲み直せば良いだけじゃん、と思い直し、丁度目の前に現れた行きつけの駅前割烹「わかさ」の暖簾をくぐった。


「へい、らっしゃい!

っと、春ちゃん、不景気な顔してどうしたんだい?」


店主のマサさんがわたしの顔を見るなり聞いてきた。

崩れた化粧は直したけれど、それでもわたしは、よっぽどしけた顔をしていたらしい。
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