合縁奇縁~去る者は追わず来る者は拒まず
「マサさんから見たら若いかもだけど、一般的にはわたしなんてお局様と呼ばれる売れ残りなんですよ」
さっき見た、あの女の勝ち誇った顔がチラついた。
くそっ!
わたしは一気に残りのビールを喉に流し込む。
酔えば少しは気が晴れるかな?
「おかわりっ!」
わたしはカウンターに空になったグラスを音を立てて置いた。
「おいおい春ちゃん、無理はいけねぇよ」
「これが飲まずにいられますかっ!!」
仕方ねぇな、と呟きながらマサさんが戸の開く音に顔を上げた。
「らっしゃい!」
威勢のいいマサさんの掛け声の後に続いて、開いた扉の暖簾をくぐって、一人の男が店に入ってきた。
わたしもいつもの癖で入口に目をやる。
まさか誠がわたしを追いかけて来るはずなんてないだろうけれど。
少しは期待しちゃうよね。