合縁奇縁~去る者は追わず来る者は拒まず
暖簾から顔を覗かせた男は、歳の頃二十台前半のイケメンだった。
ノーネクタイのスーツ姿だが、若者にありがちなオドオドとした雰囲気はなく、寧ろ店内を見渡す仕草にはふてぶてしささえ感じられた。
待ち合わせか、一見さんか?
兎に角、初めて見る顔だった。
この店は家の近所ということもあって、たまに顔見知りが立ち寄ることもあるのだ。
まぁ、今のこの心境で、知り合いに会いたくはないけどね。
彼がどうするのか気になって、何食わぬ顔して目で負った。
ところがその男、店内奥に陣取ったわたしにピタリと焦点を合わせると、真っ直ぐわたしに向かって進んできたのだ。
「隣り、いいっすか?」
こともあろうにわたしの横でピタリと止まるとそう言った。
もしかして端っこの好きな子年とか?