合縁奇縁~去る者は追わず来る者は拒まず
まだ余裕のある店内の、それもカウンター端の密な空間に、無粋にも割って入ってこうようとする無神経さ。
一応わたしの承諾を得ようと声をかけた辺りは、社会人としての常識を認めよう。
だけど、ここは薄暗い地下のバーでもない。
照明も明るい所謂健康的な居酒屋だ。
特別若作りしているワケでもないわたしの見た目に、若い男がナンパしてくるとも思い難い。
ましてや、生ビールのジョッキ片手に店主と談笑する常連客相手のホームグランドに、土足で乗り込んでこようなんて。
その度胸は認めるが……
貴様、おばはんを舐めとんな!!
「駄目にき……」
決まってるでしょ、と出かけた言葉は男の次の一声でかき消された。
「企画部の木村春子さんでしょ」
その男はわたしの所属とフルネーム口にして、ニヤリと笑ったのだ。
ええぇ~、だ、誰? こいつ??