合縁奇縁~去る者は追わず来る者は拒まず


あまりに子供じみた発想に、わたしはしばし言葉を失った。

だが、なまじ奴に自信があるだけに放っては置けない。

無言のまま放置したら、勝手に有言実行するタイプだろう。


「おもちゃの取り合いみたいな子供じみた真似はやめて」


わたしはその手を振り払いきっぱりと言った。


「他人の幸せを妬むほど、まだ落ちぶれちゃいないわ。


この涙はね、自分への慰めの涙なの。

覆水盆に返らず、って言葉知らないの?

誠がたとえあの女に振られて、わたしのところに戻って来たいと思ったとしても、手遅れよ。

わたしにその気が無いんだから。

去るものは追わず。


それがわたしのモットーなの。


だからほっといて」


「へぇ~」


山城一騎は更に楽しそうに、目を見開いてわたしの話に食いついた。
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