合縁奇縁~去る者は追わず来る者は拒まず
「お邪魔しまぁ~す」
静まり返った室内に、山城の明るい声が妙に響いた。
寝室ここか? なんて独り言を呟きながら、山城がわたしを背負ったまま廊下を歩く。
昨年購入した2LDK のこの中古マンションは、それなりの広さがある。
結婚を視野に入れたわたしなりの投資だったのだ。
今となってはそれが仇となる。
無駄に広いこの家が、なんだか空虚に感じられた。
最初に山城が開けた部屋は納戸だった。
「ちっ、お一人様は優雅だね」
なんて、毒づく声が聞こえたが、わたしには子守唄にしか聞こえない。
山城はそのままわたしを背負ってリビングまで進み、その横にある寝室の扉にたどり着いた。
わたしの部屋のベッドはセミダブルだ。
つい昨日まで、誠と半同棲生活を送っていたのだから当然と言えば当然だ。
(いや、でも……、いかにもここでしてました、みたいに思われてもやだな)
酔っていたとはいえ、わたしにも少しは理性が働いた。