合縁奇縁~去る者は追わず来る者は拒まず


「山城、ありがと、もう立てるからここでいい」


わたしは山城の肩を叩いて、心地良い彼の背中から降りようとしたのだが。


「なに言ってんですか、ここまで来たらベッドまでお連れしますよ」


そう言って彼は寝室の扉を開けた。

幸い室内は暗くて中の様子は窺えない。

わたしがホッと胸を撫で下ろし、気を許したその時だった。


「っと、暗いな」


なんて、山城が一歩戻って入口のスイッチに手を伸ばそうとしたのだ。

お一人様の2LDKマンションにセミダブル。

そんな光景を目の当たりにして、山城が笑うのが目に見えるようだ。


「や……、降ろしてっ!」


だからわたしは必死に身を捩り、足をばたつかせて山城の背から降りようともがいた。


「ち、ちょっと春さん、暴れないでくださいよっ……

って、コラッ!

うわぁ……」


体勢を崩した山城は、わたしを背負ったまま身体を傾け倒れこんだ。



こともあろうにベッドの上へ。
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