合縁奇縁~去る者は追わず来る者は拒まず
山城は真っ直ぐ店の奥に座ったわたしのところまでやってくると、今日は無言でわたしの隣りに座り込んだ。
「お疲れさん、この前の兄さんだね」
マサさんの問いかけに、山城は無言で頷いた。
なんか様子が怖いんですけど……
「ご注文は?」
「いや、俺は春さんを連れに来ただけですから」
「え? わたし? わたし今来たばっかりだよ。
それにあんたと約束なんかした覚えはないけど?」
「そっちに無くても、こっちにあるんですよ。
だいたい何なんですか?!
僕という者がありながら水木なんかとベタベタして。
おまけに僕を置いて一人で帰るし。
まぁ、春さんの行動パターンはお見通しですけどね」
と勝ち誇ったように山城はわたしを見下ろした。
「ジムなんて行ってたとこみると、僕の渾身の三発は失敗に終わったってことかな?
日が悪かったのかなぁ~」
と首をかしげる姿は、まだ世間知らずの若者だ。
「あなたねっ!」
「今度は排卵日ちゃんと教えてくださいよ。僕、予定空けときますから」
「そういう問題じゃっ!」
「だって春さん、子どもが欲しいんでしょ?」
全く悪びれる気配もない山城の様子に、わたしはがっくしと肩を落とした。
「だからって、後先考えずに一人で子ども産むほどわたしは切羽詰まってるわけじゃない。
馬鹿にしないでっ!」
わたしはつい興奮して、カウンターを手の平で叩いてしまった。