合縁奇縁~去る者は追わず来る者は拒まず
「えぇ~、良子泊まってかないの?」
「こっそり夜中にいちゃつかれちゃたまんないわよ。
春子にその気が無くても、あいつにはありそうだし」
フン、と鼻息を吐いて良子は終電に間に合うように帰っていった。
学生時代からの旧友である良子は、わたしの男運の悪さも良く知っている。
そういう良子自身も、最後は身を引く幸薄い女なのだ。
わたしは一人でも生きていけるから……、涙に溺れてそう言った彼女を何度見たことか。
ま、結局はわたし達二人共、男を見る目が無いってことなのだけれど。
冷静に見えて実は、恋に溺れているのはわたし達の方なのかもしれない。
耳元で囁かれる愛の言葉を信じて、他の女に目移りする男を見抜けないなんて!
自分には永遠が存在すると疑わないから、騙される。
ま、騙すより騙される方がわたしは人間らしくて好きだけど。
さて、この男はどうなのか?
「春さん、何難しい顔してんですか?
あれ? 今日って生理の日じゃないっすよね?」
真顔で指折り数え始める、この男、山城一騎。
どこからどこまでが本気なのか、わたしは測りかねていた。