合縁奇縁~去る者は追わず来る者は拒まず
そんなある日、残業帰りのロビーで、誠とばったり鉢合わせした。
「お疲れ、頑張ってるな」
「誠こそ、お疲れ。その後どう?若い彼女と上手くやってる?」
冷やかし半分、探り半分、わたしは久々に誠の顔をじっと見た。
「あぁ、まぁな。でも……」
「でも、なによ?」
歯切れの悪い誠は、思った通りの言葉を吐いた。
やっぱり何処か疲れた感じだ。
「若い女は疲れる。
そりゃ、最初は新鮮で、男としての自信を奮い立たせてくれたさ。
たけど、いざ日常となるとな」
「それって愚痴じゃないよね、惚気だよね?」
「さぁ、どっちかな……」
「まさかあんた、わたしを振ったこと忘れた訳じゃないよね?
捨てた女に、新しい女の愚痴ってどうよ?
あんたは三年付き合ったわたしより、若さをとった。
若くて、未熟で、でも自分を求めて崇めてくれる新しい恋人を選んだんだよ!
まさか今更、やっぱりお前の方が良かったなんてほざくつもり?」
捲し立てるわたしの剣幕に、ぐっと押し黙った誠は「ごめん」と一言呟いた。
それから誠は話題を変えて、今まとまりかけてる大きな取引のことを自慢げに話してくれた。
それが上手くいけば、彼女と結婚するつもりでいると。
「家庭に入って、子どもでも出来れば女も落ち着くもんだろ?」と最後に本音を漏らして去っていった。
(甘いな、あの手の女の欲望は果てしない。若さの問題ではないのだよ)
わたしは去り行く誠の背中に向かって「グッドラック」と小さく呟いた。
お互い幸せの未来に向かって頑張ろう!そんな願いを込めて。