合縁奇縁~去る者は追わず来る者は拒まず
地下にあったそのバーの、出口から階段まで、必死に背筋を伸ばし虚勢をはって駆け上がった。
外は生暖かい風が吹く夏の夜更け。
「暑いっ!」
そう吐き捨てて上着を脱いだ。
誠に呼び出され、待たされること小一時間。
一人で飲んだマティーニが身体を火照らせていた。
「飲み直さなきゃやってらんない……」
わたしはフラフラと家路を急ぎ歩きだす。
早くこの場を離れたい一心で。
なんかもう、どうでも良くなって、このまま消えてしまいたい気分だった。