合縁奇縁~去る者は追わず来る者は拒まず
好きだった。
誠だけは、ありのままのわたしを認めてくれている、そう思ってた。
でも……
一緒に暮らし始めてからも、「これはけじめの問題だ」とか何とか言っちゃって、自分のアパートをずっと解約せずにいたのは誠だった。
出張や残業で遅くなった時、彼は職場に近い自分のアパートへ帰るのが常だった。
わたしはそれに何の疑いも持たず、全ては弱気な彼の性格故とばかり……
間抜けだわ、わたしってば……
先月の部内旅行。
奴は買ったばかりの新車に乗って熱海の温泉旅行に出掛けて行った。
おかしいとは思ったけどね。
そんなに新車に乗りたいのかと、その子供っぽさに呆れる方が先に立って。
まさか、女に見せるためだったとは……
「ばっかみたい……、わたしの本気はなんだったのよ……」
心の声が思わず口をついて出た。