合縁奇縁~去る者は追わず来る者は拒まず


熱い涙が頬を伝った。


今更泣いても遅いけど、あいつの前で涙を見せるほど落ちぶれたくはなかったのだ。


泣いて縋るなんてみっともない真似、できる訳ないでしょ!

だいたい、若さに負けたなんて、男のエゴに負けたようなもんじゃない!!

馬鹿にしてる!!!


怒りに任せ、握った拳で電車のドアを叩いていた。

鈍い音と無機質な感触。

そう多くない乗客の視線がわたしに集まった。


見世物じゃないって……


我に返って、車窓に映った自分の姿に愕然とした。

泣いて化粧が剥がれて、描き損なった自画像のような自分。

動物園の猿以下だ。


嗚呼……、天は我を見放したかっ!
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