ミッション#メロンパンを争奪せよ!
何も答えなかった。
かわりに…ギュッと力が強くなる。



何が起きているのかあんまり理解できていなかった。

だけど心臓がドクドクとうるさいのは分かった。



体が熱くなるのが分かった。


気温のせい?
この学校は庶民校だ、エアコンなんてない。

…抱きしめられてるせい?
息が、少し、荒く、…なってる。




「…嬉しそうな紗緒ちゃんを見るのが」
「えっ」

急に先輩の声が聞こえた。


「ただただ、好きだった…。」


表情なんて、見えない。



「唯人を見てる時の、幸せそうな顔が…好きだった…。」


「…先輩…。」





「だけど俺とじゃ、その顔は見れない…。それでもいいんだ、ただ隣で笑ってほしかった…、先輩、後輩、それだけでよかった…。」



「…っ。」


何も言えなかった。
先輩の言いたい事は分かる。


『…そういや、なんで彼女さんフっちゃったんですか?』


『他に好きな人ができたからかな。』






…私……の、事………。






「やっぱダメだよ俺…。」
「なっ…なにがですか…?」

先輩の声が少し低く切なくなったのが分かった。



「好きだなんて言うつもり…」

先輩の力がゆるまって
肩をつかまれて180度回転

先輩の切ない顔が私を見てた。




「なかったのに。」




もう一度
ギュッと抱きしめられた。






心臓が




ドキドキとうるさかった。
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