【B】(第一夜完結)Love around ※第二夜準備中


そうか……塔矢……と言うのか……。


あの……最低女は……。


「あっ、やっぱり先生怒ってらっしゃいます?

 本当に朝は失礼なことをしてしまいました。
 遅刻ギリギリで時間がなくて……」

「あっ、塔矢さん。
 大丈夫だから。
 早城先生は怒ってるわけじゃないからね」


相変わらず無言状態の俺を必死にフォローする由貴。



誰が怒ってないって?




「えっと……良かったら明日でも御一緒にお食事させて頂けませんか?
 今日のお礼させてください。

 明日が都合悪ければ先生のご都合の良い日で構いません」



食事?

何処をどうすれば食事にまで話が発展する?


「あっ……」

申し出を断ろうとした時、由貴が俺の会話を遮ぎる。


「飛翔は明日、日勤だよね。
 行っておいでよ。

 神威君の食事は妃彩さんに頼んでおけば大丈夫だから」

「……だが……」

「大丈夫。

 私も明日は日勤ですから、神威君は帰り道にお迎えにあがりますよ。
 だったら安心でしょう?

 その後も責任持って家まで送り届けておきますから
 安心してお出掛けください」



おいっ。
勝手に決めるなっ!!



どこをどうしたら俺がコイツと一緒に出掛ける予定になる?
ったく……昔からこいつマジで性格変わってねぇな。



「えっと……私は……」


俺たちの会話を聞いていた塔矢は最終確認の為にゆっくりと会話を続ける。



仕方ないか……由貴が言った手前、今更断るわけにもいかないか。



「わかった。
 明日、仕事が終わり次第でいいか?」

「あっ、はい」

「なら終わり次第、詰め所に顔を出す。
 それでどうだ?」

「はい。わかりました」


塔矢は一礼をして慌ててレストランを出て行く。


「由貴、高くつくぞ」

「そんな言い方ないでしょ。

 私の仲介料の方が高いですよ。
 そうですねー、飛翔には今週の土曜日5日後の予定をあけていただきましょうか」

「…………」

「ふふ、そんな顔しないでださいよ。

 土曜日、勇を招いて自宅でランチの予定なんです。
 だから飛翔もどうかと思いまして……。

 車仲間の時雨は生憎、出かけていていませんが……」

「そうか。わかった」

「絶対ですよ。
 
 妃彩さんには今すぐ連絡してしまいますからね。
 キャンセルなしですよ」

「あぁ」


ったく……こいつにゃ叶わねぇよ。


「それよりさっきの話。

 根本的には勇と鷹宮の問題だろうな。
 鷹宮がそれに何時気がつくかってとこだろ」

「えぇ。
 今も……勇は千尋君が中心ですからね……」

「まぁな。
 当人同士が何とかするまで見守るしかないだろ」

「そうですね」

「なら俺は行くよ。
 由貴も外来頑張れよ」

「えぇ」


レストランを後にすると俺は午後からの回診の為、
外科病棟へと足を向ける。




……食事か……。



ここ数年、あいつら以外とゆっくりと行ったことなんてなかったな。


神威がうちに来たあの日から。
まぁ、息抜きもたまにはいいかもな。
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