【B】(第一夜完結)Love around ※第二夜準備中
「お帰りなさいませ。ご当主、飛翔」
「ただいま。
万葉、夕方当社の株式情勢を確認した。
一部下落しているようだが原因は?」
アイツはすでに仕事モードで、万葉を従えて
部屋の方へと移動していく。
「飛翔、お帰りなさい。
明日お休みよね」
「あぁ。
明日は、生駒の神子との予定も入ってなかったな」
「えぇ、明日は入っていませんわ。
だから私、少し出掛けたいんですの。
車出していただけませんか?」
そうやって珍しく俺に頼む華月だが、
俺に頼まずとも、華月には一族の専属運転手が存在しているため
俺が率先して動く必要などない。
だがそれでも頼んでくるのは、何か別の理由があるのだろう。
「あぁ、構わない。
明日は俺も特に用事は入っていない」
そう告げると華月と別れて、神威の部屋へと向かう。
「神威入るぞ」
声をかけてドアを開けるも、すでにアイツは部屋には居なくて
別のところ出掛けたみたいだった。
総本家内の俺の部屋へと入ると服をソファーに引っかけて家着に着替えると
そのままベッドへと横になると睡魔が誘ってくる。
朝まで目覚めることなく眠りに落ちてしまった。
翌朝、六時前に目覚めた俺は朝風呂と着替えを済ませて
邸の外へと出る。
そのまま朝の空気を吸い込みながら、海辺の方へと歩いていく。
兄貴と両親の墓参りを終える。
ゆっくりと遠回りをしながら歩いて帰っていると、
村人たちが俺を見ながら拝むようにお辞儀をする。
早城の名を持つとはいえ、徳力の本家の血筋を持つ者には変わりない。
今も悪しき、生神の習慣が根強いこの地。
半ばうんざりしながら、視線を感じつつ邸まで帰りついた。
すでに朝食の準備が終わっていて俺の帰りを待っていたようだった。
俺は慌てて手を洗ってテーブルにつくと、一斉に手を合わせて朝の挨拶の後
それぞれに食事を始める。
食事を食べ終えると、華月がゆっくりと神威に声をかけた。
「ご当主、海神校から保護者にあてた連絡メール拝見いたしました。
学内パーティー用の正装を作りにいかないといけませんね。
飛翔、車出してくださいね。
他にも学校で必要なものがありますでしょう?」
華月の言葉に、そうだったのかと……昔の学院生活を思い返しながら納得した。
学院からの保護者にあてた連絡網は、後見を務めている華月の元へと届けられる。
「神威、準備が出掛けたら行くぞ。
必要なものがあったら言え」
そう言ってアイツの髪をくしゃくしゃにしながら頭を撫でる。
「うるせぇ、飛翔。
オレが話す前に華月が話したんだよ」
そう言いながら突っかかってくる反応が、
少し嬉しく感じる俺も存在した。
9時頃、総本家を出発してマンションの方に向けて車を走らせる。
マンションから二駅向こうの街に、一族が管理するデパートが存在する。