【B】(第一夜完結)Love around ※第二夜準備中
「神威、華月、頼む」
短く塔矢の傍に付き添って欲しいと告げると、
華月はゆっくりと頷いて、担架の後ろをついていく。
「飛翔、お前は?」
「やること片付けたら追いつく。
家族に連絡しておくんだろ。
神威、お前もあっちを頼む」
神威にも告げると、アイツは面白くなさそうに
華月の後をついて歩く。
塔矢を見送った後、俺は電話を取り出して鷹宮へと電話を入れる。
そこで水谷さんに繋いでもらって、
塔矢李玖が徳力の経営するデパートで過呼吸で倒れた旨を伝えた。
家族にだけは知らせてほしいと言うこと、
そして俺がその場に居合わせて、今は救護室のベッドで眠っていることを付け加えた。
電話を切って救護室へと向かおうとしていた俺に、
ずっとその場に居た女が近づいてくる。
確か……コイツ、消えた男と一緒に居たやつだったな。
塔矢と何か関係あるのか?
警戒しながら相手を見据える。
「すいません。
さっきは友達の李玖を助けてくれて有難うございます。
私、清水香穂っていいます。
李玖とは前の職場の同僚で、看護学校からの親友です。
李玖が倒れた時の処置が手慣れてたらしたけど、
どこかの先生ですか?」
「鷹宮総合病院」
「うわぁ、あの鷹宮の先生なんですね。
李玖、運がいいな。
それで先生は李玖と親しげだったけど、
もしかして彼氏?とかですか?」
親しげにズケズケと聞き込んでくる目の前の女に
うんざりしながら、その場を去ろうとすると、
そいつは俺の手を掴み取って大衆の面前で俺の手を自分の胸へと触れさせる。
「李玖の恋人じゃないなら、今から私のこと知ってよ。
それに貴方が李玖を好きでも、李玖は堺先生が好きなの。
堺先生の8番目の恋人だもの。
堺先生ってさっき、先生の近くに居た男の人ね。
消えちゃったでしょ。
あの人が私の職場、李玖の前の職場の堺総合病院の次期院長。
堺泰典先生、李玖の想い人だから。
そう言う意味じゃ、先生は恋人同士の邪魔をしたの」
彼女の親友と言葉で口ばしりながら、
親友のことを伝える会話とは言い難い言葉が要所要所に飛び出してくる。
俺の腕を掴む目の前の女の手首に気になるリストカットの後を見つけながら、
目の前にいるコイツに嫌悪感しか感じられなかった。
「最低の女だな」
「アンタこそ、真に受けてバカみたい!!」
俺の言葉に目の前の女は、睨み付けながら売り言葉に買い言葉のように暴言を吐き出す。
「失せろ」
これ以上、相手にするのも煩わしくて鋭い低音で厳しく声を荒げた。