【B】(第一夜完結)Love around ※第二夜準備中
10.繰り返す女 -飛翔-
四月。
一族の経営するデパートで、職場の同僚である塔矢を介抱したあの時から
一ヶ月が過ぎようとしていた。
あの日以来、殆ど塔矢と会話をすることがないまま今日までやってきたが、
俺自身、アイツと絶対に話す必要性も見いだせなかった。
ただ一つ。
あの一件の後から、俺の周囲に一台の不審者が何度も何度も付きまとうようになる。
不審者といっても、相手を知らないわけじゃない。
その不審者の中から出てくるのは、あの日、塔矢の親友だと名乗った女。
そして何度も俺の前に姿を現すにつれて、
その女の手首には何度もカッターナイフなどで傷つけたであろう
リストカットらしき痕が目にとまる。
その日も勤務を終えて愛車に乗り込んだ俺が病院を出発すると、
一つ目の交差点の傍から、その女が乗っているであろう車が後ろに付きまとう。
ちっ。
思わず舌打ちをしてその車を巻くように、住宅街の中をわざと通って周り道で車を走らせる。
今日は平日。
徳力絡みのスケジュールはこの後はない。
それ故に急いで帰る必要性はないが、あの日から一ヶ月。
あまりいい気がするものではない。
ハンドル付近にある、携帯端末のリモコンを指先で操作して
運転しながら時雨の元へと電話をかける。
「もしもし、飛翔どうかした?」
「今いいか時雨?」
「構わないよ。仕事は終わってるから」
「仕事はってことは……裏ってことか?」
「裏も表もないって。
それより?」
「時雨と合流したい。
だが由貴の家も俺のマンションもダメだ」
そう言葉にした途端に、電話の向こうで呆れたような溜息が零れる。
「由貴に話せない?ってまた厄介事?」
「まぁな」
「お前、今何処?」
「梅が丘の駅近く」
「近くにいるわ。
こっちは今、氷見【ひさみ】の屋敷。
駅前のコンビニに行くから拾って」
「了解」
そう言うとすぐに通話は切断される。
チラリとバックミラー越しに後ろを覗くと、
ピタリと付きまとってくる例の車。
ついてきているのを確認して、
そのままコンビニの駐車場へと誘導するように車を走らせた。
店舗の入り口前の駐車場に車をバックでとめた俺は、
運転席のドアを開けて、コンビニの店内へと入る。
一族の経営するデパートで、職場の同僚である塔矢を介抱したあの時から
一ヶ月が過ぎようとしていた。
あの日以来、殆ど塔矢と会話をすることがないまま今日までやってきたが、
俺自身、アイツと絶対に話す必要性も見いだせなかった。
ただ一つ。
あの一件の後から、俺の周囲に一台の不審者が何度も何度も付きまとうようになる。
不審者といっても、相手を知らないわけじゃない。
その不審者の中から出てくるのは、あの日、塔矢の親友だと名乗った女。
そして何度も俺の前に姿を現すにつれて、
その女の手首には何度もカッターナイフなどで傷つけたであろう
リストカットらしき痕が目にとまる。
その日も勤務を終えて愛車に乗り込んだ俺が病院を出発すると、
一つ目の交差点の傍から、その女が乗っているであろう車が後ろに付きまとう。
ちっ。
思わず舌打ちをしてその車を巻くように、住宅街の中をわざと通って周り道で車を走らせる。
今日は平日。
徳力絡みのスケジュールはこの後はない。
それ故に急いで帰る必要性はないが、あの日から一ヶ月。
あまりいい気がするものではない。
ハンドル付近にある、携帯端末のリモコンを指先で操作して
運転しながら時雨の元へと電話をかける。
「もしもし、飛翔どうかした?」
「今いいか時雨?」
「構わないよ。仕事は終わってるから」
「仕事はってことは……裏ってことか?」
「裏も表もないって。
それより?」
「時雨と合流したい。
だが由貴の家も俺のマンションもダメだ」
そう言葉にした途端に、電話の向こうで呆れたような溜息が零れる。
「由貴に話せない?ってまた厄介事?」
「まぁな」
「お前、今何処?」
「梅が丘の駅近く」
「近くにいるわ。
こっちは今、氷見【ひさみ】の屋敷。
駅前のコンビニに行くから拾って」
「了解」
そう言うとすぐに通話は切断される。
チラリとバックミラー越しに後ろを覗くと、
ピタリと付きまとってくる例の車。
ついてきているのを確認して、
そのままコンビニの駐車場へと誘導するように車を走らせた。
店舗の入り口前の駐車場に車をバックでとめた俺は、
運転席のドアを開けて、コンビニの店内へと入る。