【B】(第一夜完結)Love around ※第二夜準備中
「お母さん、ハンコ待って。
荷物確認するから」
慌てて玄関まで辿り着くと、宅配業者の人が持ってる荷物に視線を向ける。
自然食品●●。
これもだ。
こんな荷物注文してない。
「すいません。
この荷物にハンコは押せません。
注文してないので、受け取り拒否で」
押し付けるようにドライバーさんに荷物を押し戻すように返して、
私は玄関をしめた。
そしてその場で壁に持たれてズルズルと座り込んで俯く。
「李玖、どういう事?
何が起きてるの?お母さんに話してちょうだい?」
心配するように、少し怒るようにお母さんの声が私に降り注ぐ。
ようやくお母さんにだけ、私は今、自分の身に起きていることを言葉にして伝えることが出来た。
「李玖、怖かったわね……。
大丈夫よ。お母さんも、もう李玖の荷物は勝手に受け取らないわ。
李玖が本当に注文した荷物は、お母さんにも教えてちょぅだい。
その荷物は、ちゃんと受け取っておくから」
久しぶりにお母さんの温もりを感じた時間。
私はずっと我慢していた涙をとめることが出来なくなって泣き続けた。
翌日の休み、お母さんは休みを取って私たちは最寄りの交番へと相談に出掛けた。
だけど警察には事件が起きていない、民事には介入できないよっと
あしらわれる様にその場を後にした。
警察でこっちに相談したらと紹介されたのは、消費者センター。
そこにも顔を出して、今までの事情を伝えて、消費者センターのスタッフを交えながら
通販の荷物の情報を再び詳しく聞く。
全てパソコンか携帯・スマホからの購入の申し込みで、私・本人からの注文だと主張する販売元。
一方的に送りつけている荷物ではないため、
私に成りすました誰かが注文しているのが感じられた。
薄らと考えていた出来事が現実のものに確定する。
今回送られてきた荷物に関しては警察にも事情を話した旨を伝えて、
高額の健康器具関係の商品は、返品できるように消費者センターの人に交渉して貰えた。
丸一日が、対応に追われて潰れ精神的にどっと疲れた夜、
私は見慣れない電話番号に、もっと恐怖を覚えることになる。
知らない番号から着信が入る携帯電話。
怖い私は、すぐに出るなんて出来なくて鳴り続ける着信音に怯え乍ら部屋の隅で体を縮めた。
留守番電話サービスセンターに繋がったのか、音が鳴りやみ、留守電マークが待ち受け画面に表示される。
恐る恐る携帯を操作して、留守番電話の内容を聞こうと耳に電話をあてる。
*
新しいメッセージは一件です……
*
機械音声に従ってボタン操作をすると、先ほどの内容が再生される。
『李玖ちゃん、どうして電話に出てくれないのかな?
おじさん、早く李玖ちゃんの声が聴きたいのに。
何時だって君はやらせてくれるんだよね。
今日、待ち合わせしようか?
おじさんは、君の家だって構わないんだよ』