【B】（第一夜完結）Love around ※第二夜準備中

12.怯え続ける女 －飛翔－

由貴と時雨と三人で話し合ったあの日から塔矢の事が気になるようになった。

ったく、由貴の掌で転がされてる感が拭えないものの、
塔矢に意識を向ければ向けるほど、彼女の様子が出逢った頃に比べておかしいことに気がつく。


日に日に悪くなっていく顔色。
途切れていく集中力。


何かに怯えるように俯くことが多くなっているし、
極端に周囲に意識を張り巡らせているのか、
精神が張りつめられているのを感じられた。



由貴が気にしていたのは、この事か……。




元々、この病院に入職して以来、極端に看護師の誰かと仲良くなって
バカ騒ぎするようなことはしてなかったが、それでも仲のいい奴は居たはずだ。



そう言ってステーションに顔を見せると、
彼女は指導係の殿村に何かを告げられているようだった。



そんな彼女を眺めていながら何度か病院で擦れ違うことはあっても、
特に声をかけることはしなかった。



俺自身が誰かに興味を持つ。
そんなスタイルは、俺の意に反する。



鷹宮に入ってからも、次から次へと近づいて来ようとする女たちに
自分からプライベートのことで声をかけたことなどない。


この病院に勤める女は、同僚であって知人でも恋人でもない。


それに……俺には兄貴の忘れ形見がいる。
アイツを……神威の一件が片付くまでは女を作って遊んでる暇なんてない。


医者としての腕もまだまだ磨きたい。
徳力の家のことも、アイツの補佐をしっかりと担いたい。


一日が２４時間しかないなんて、時間が足りないくらいだ。
その上、女なんぞに時間をさけるかっ。


そう思っていたのに、最近の俺は俺自身が戸惑うほどにおかしい。


こうして……俺が、塔矢のことを気にかけてる。



由貴に言われたから、気にかけてるだけだ。
そこに俺の意思はない。

それ以上、何かを求めることはない。



そう、自身に言い聞かせては見ても、明らかに今までのそれと違っているのは
俺自身が一番わかっていた。