【B】(第一夜完結)Love around ※第二夜準備中
床に打ち付けられたまま、どうにも出来なかった俺は
怒りをぶつけるように何度も何度も拳を床に叩きつける。
少しでも塔矢の手掛かりが欲しいだけだ。
こんなにもアイツの所在がわからなくなっただけで、苛々してる振り回され続ける俺。
「おいっ、早城」
気遣う嵩継さんの声も、今の俺の問題を解決するものではない。
「すいませんでした」
お辞儀をしてそのまま立ち上がると、
口元の血を掌で拭って処置室を出ようとした。
「飛翔。
時雨から電話入ったよ」
そう言って由貴は、医療用PHSを俺に手渡す。
時雨からの電話は、塔矢の所在らしきものを見つけられたかもしれないと言うこと。
候補が三カ所くらいに絞れたため、今から現場に向かうと言うことだった。
「時雨、俺も抜ける。
俺の携帯にも所在を転送してくれ。
もしもの為に、俺も必要だろ」
もしもの為。
そんな言葉、正直使いたくない。
だけど……その言葉を使う以外に、警察の中に紛れて俺が関われる術が存在しない。
慌ててPHSを切ると嵩継さんが俺の前に立ちふさがる。
「早城、氷室に聞いたぞ。
透析室の看護師が、行方不明だと?
なんでもっと早くオレに言わない?
さっきの電話相手、時雨って言ってたな。
時雨っていやぁ、金城さんの警察官の息子さんじゃないか?
何か進展あったのか?
待ってろ、オレも着いていくぞ。
院長にだけ連絡入れさせてくれ」
そう言ってすでに受話器を取って連絡をしようとする嵩継さんの手から、
受話器を所定の位置へと戻させる。
「塔矢は俺が連れ戻します。
さっきの患者、清水香穂は塔矢の元友人の一人。
堺記念病院の看護師だ。
そして多分、今回塔矢を貶めた一人だと思います」
「後、詳しくは調べてないからわかりませんが、
何度かの接触で感じたのは、彼女は何らかのパーソナリティー障害を保持している可能性があります」
「パーソナリティーって……、人格障害ってことかよ」
そのまま嵩継さんは、頭を指先でかいて溜息を吐き出した。
「わかったわかった。
とりあえず暫く、薬いれて強制的に眠らされるさ。
体が回復次第、警察と連絡を取って専門機関に。
そう言うことだな」
「お願いします。
後、俺……今から病院抜けます。
オンコール呼び出して、協力を仰いでください」
「おぉよ。
こっちは、何とでもする。
早城、氷室、無茶すんじゃねぇぞ」