【B】(第一夜完結)Love around ※第二夜準備中
嵩継さんの言葉に、俺は白衣を脱ぎ捨ててそのまま病院から飛び出す。
ポケットには免許の入った財布と車の鍵。
そして電源を切った携帯電話。
走りながら、携帯の電源を入れてそのまま時雨からのメールを確認する。
一か所目が三年前に倒産して廃屋となっているパチンコ屋。
二カ所目がもう古くなって使われなくなった材木工場の跡地。
三カ所目が海沿いの貿易倉庫。
ぞの場所も、地点から地点への距離は広い。
全てを順番に辿っていては、時間のロスにもなりかねない。
一か所に絞らないと。
その思いから、俺は病院に電話をかけて総師長へと繋いでもらった。
水谷さんから聞き出した、彼女の新しい電話番号。
その電話番号のGPSを辿って欲しいと時雨へと伝える。
願わくば、その携帯電話が彼女の居場所を伝えてくれるようにと。
それと同時に、万葉と華月に連絡して徳力の防犯カメラから、
彼女の足取りを絞ることが出来ないか伝える。
方々からの連絡を待ちながら、由貴を助手席に乗せて
俺は車をそれぞれの中間地点まで急がせた。
車内に着信を告げる携帯電話。
「もしもし」
「飛翔さま、少し気になる情報が。
油谷【ゆたに】地区に古くなって使われなくなった材木工場の跡地に、
最近、数人が出入りをしていると言う情報が」
万葉の告げた情報は、時雨の情報の一つの場所とリンクする。
二番目の材木工場跡地を目的に絞り、引き続き車を走らせていると
次に時雨からの電話が着信を告げた。
「飛翔。彼女のGPSが掴めたよ。
Y市内の油谷【ゆたに】交差点近くだね」
Y市内の油谷。
「時雨、油谷の材木工場だ。
うちの万葉からも、最近その材木工場に数人が出入りしていると
報告が入った。
今その場所に向かっている。
後、五分もあればつきそうだ」
時雨と電話を切ると、更にアクセルを踏み込む。
俺たちが現場に到着した時、すでに何台かのパトカーが到着して中の様子をうかがっていた。
近くに車を停めて、現場の方へと向かう。
「はいっ、下がってください。
ここは立ち入れませんよ」
すでに封鎖の仕度をして、物々しくなっている現場で
俺は時雨の姿を必死に探す。
「鷹宮総合病院の早城と氷室です。
警察関係者の金城さんから連絡を頂いてきたものです。
金城時雨はどちらですか?」
時雨の名前を出した途端に、
現場の警察官の態度は変貌する。