【B】(第一夜完結)Love around ※第二夜準備中
「失礼しました。
金城警視正が連絡された方でしたか。
ご案内します」
そのまま立ち入り禁止区域へと案内された俺と由貴は、
時雨の元へと案内された。
「時雨、遅くなった」
「そろそろ突入しようかと思っている。
中に居るのは三人。
そのうちの一人は、多分彼女だろう。
無茶すんなよ。飛翔」
「由貴、お前はここに居てくれ」
そのまま由貴を残して、俺は時雨から手渡された防護用の服を
シャツの下に着こんで更に奥へと急いだ。
ボロボロになった廃屋のような材木跡地。
先行している警察官の合図を受けて、
時雨が指示を出しながら、ゆっくりと現場に近づいていく。
ドアを壊して、突入した途端別のドアから勢いよく飛び出していく犯人と思われる男二人。
一斉に追いかける警察官たちとは別に俺は建物の中へと駆け込んだ。
割れた窓ガラスから差し込む光が、
少しだけ真っ暗な中の様子を映し出す。
ポケットから携帯電話を取り出して、その灯りで周囲を見渡しながら
塔矢の姿を探す。
部屋の片隅、衣服をはぎとられてぐったりと横たわれっているアイツを見つけた。
「塔矢っ」
そのまま駆け寄ると来ていたシャツを彼女の体にかけると同時に、
状態を確認しようと指先を首元に触れる。
携帯電話の光で少しずつ体の状態も確認していく。
体からは打ち身や内出血の後が確認できる。
「飛翔、犯人確保したぞ。
それより彼女は?」
「無事だよ。
意識は失っているが、バイタルは安定してる。
悪いが毛布か何かを持って来てくれないか?」
そう告げると、現状を確認した時雨は「わかった」っと
俺の肩を叩いて外に出て行った。
暫くすると、由貴と時雨が毛布を持って俺の傍へと近づいてくる。
「飛翔……」
「飛翔、救急車の手配は?」
「大丈夫だ。
彼女も大事にはしたくないだろうから、
俺と由貴は彼女を連れて帰る」
「わかった」
「由貴、時雨、今日は彼女をとめてやってくれ。
俺もとまる」
そう言うと毛布で包んだ彼女の細い体を抱きかかえると、
乗ってきた車へと歩いていく。
そのまま運転を由貴に任して、
俺は塔矢を毛布越しに抱き続けていた。
そんなにも誰かのことが気になってやまないのは、
初めてのことだった。