【B】(第一夜完結)Love around ※第二夜準備中

15.先生の親友~忘れたい記憶~-李玖-


目が覚めたのは真っ暗な部屋に、見知らぬ空間。

「何処?」

そう思いながら体を起こす私に「気がついたのね」っと
知らない女性の声が聞こえた。

そして足音の後、すぐに部屋の灯りがつく。



「まだ無理はしてはいけないわ」


柔らかい口調で話すその人は、
ゆっくりと私の方に近づいてきて、
ベッドの中で必死に体を起こそうとする私を窘めた。

そして再び、ベッドで休むように促すと愛らしい笑顔と共に言葉を続ける。


「塔矢李玖さんでしたわね。
 今、由貴さんと早城さんをお呼びしますね」



由貴さん?
早城さん?


その名前を聞いても、最初の名前は心当たりはない。

だけど……後に紡がれた名前は、
もしかしなくても……早城先生?


私の知り合いに、早城なんて名字を持つ人は
今年に入ってからであった早城先生だけで……だけどその、早城先生が
どうして私を助けたのかがわからない。



いやっ、考えれば考えるほどわからなくて
それでも、全く知らない人のところに居るよりは
僅かでも知ってるの人のところにいると言う安心感が欲しいと言うか。


ベッドの中でグルグルと思考を張り巡らしてる間に、
再びドアが開いて、幾つかの足音が近づいてきた。



「痛みはないか?」


ふいに降り注いだその声は私が唯一知る早城姓を持つ存在で……。



「飛翔、もっと優しく声をかけてあげないと
 塔矢さんが怯えてしまいますよ」


その後ろから声をかけるのは、病院で何度も聞く氷室先生の声。


何故?


掛布団を少しずらして、部屋に居る人達を見ようと視線を向ける。
すると近づいてきた早城先生の顔と同時に額に触れる掌。



それだけで、ドキドキしてしまってる自分と
息苦しくなる閉塞感が隣り合う。


閉塞感はパニック発作が引き寄せるもの。



「飛翔、少し離れてください。
 塔矢さんの発作が出そうですから」


すぐに発作に繋がりそうな前兆を感じ取って、
氷室先生は早城先生に声をかける。

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