【B】(第一夜完結)Love around ※第二夜準備中

「金城です。
 この度は、警察に相談にいらしていたにも関わらず、
 このような対応になってしまって申し訳なく思っています。

 まだまだ警察内部でのシステムを改正していかないといけないとは思うのですが、
 何分、自分の立場ではその権限も乏しくて……。

 でも今回、貴方を助けられたことは本当に良かったと思っています。
 辛いとは思いまずが、事件の全貌を解決するためいろいろと明日以降、お話を聞かせて頂ければと思っています」


そう言って、金城さんと言う警察官らしき人は丁寧にお辞儀をしてこの部屋を出て行った。




「さっ、由貴さんも早城さんも出ていってくださいね。
 私は床に敷いた布団で休ませて頂きますね」


そう言うと、氷室先生の奥さまは先生たち二人を部屋から追い出すように声をかける。

先生たちが退室すると、当然ながら部屋に残されたのは
私と氷室先生の奥さま。



「塔矢さん……なんだか呼びにくいわ。
李玖さんっとお呼びしてもいいかしら?」

「あっ、はい」

「まぁ、良かった。
 でしたら私のことも妃彩とお呼びくださいね。

 部屋の電気は消しますか?つけておきますか?李玖さん」



床に敷いた布団を整えながら私を気遣ってくれる。



何時もは電気を消さないと眠れないけど、
今日は明るい方がいいかも知れない。


暗がりは、あのナイフの切っ先があたる感触を思い出すから。




「えっと……出来ればつけておいてほしいです。
 でも妃彩さんが眠れないなら消してください」 

「まぁ、私は大丈夫ですよ。
 私も暗闇は得意ではないのですよ。

 私、両親が事故で亡くなって施設で暮らしてきたんです。
 その場所で、あんまり思いだしたくないことが沢山あって……、
 その場所から救い出してくれたのが、時雨さんの双子の弟・氷雨【ひさめ】だったの。

 でも氷雨も事件に巻き込まれて他界してしまって、その後の時間を由貴さんに沢山支えて貰ったの。
 早城さんに出逢ったのも、その頃だったのよ。

 李玖さんの職場である鷹宮にも私、ケアステーションでお世話になってたこともあって詳しいのよ。

 だから安心して。
 鷹宮の先生たちって、本当に親身になって助けてくれるから。

 李玖さんも、由貴さんや早城さん、それな時雨さんを信じてあげて」




妃彩さんは自分の生い立ち的なことをサラリと伝えてくれて、
私を緊張させないように話かけてくれる。

だけどその会話の途中に、何度も欠伸をかみころしているのも確認してる。


「妃彩さん、お休みなさい」

「お休みなさい、李玖さん」



そう言うと、ようやく長すぎた夜が終わろうとしているのかもしれないと思えた。



翌朝、仕事に向かったと思っていたはずの氷室先生は妃彩さんの合図と共に
私が居る部屋へと入ってきた。



「おはようございます。
 昨日はちゃんと眠れましたか?」


氷室先生の問いに、何度かウトウトしては覚醒したことを伝える。


「薬をお渡しすれば良かったですね」

「あっ、大丈夫ですよ。
 ウトウトしては覚醒してたので、寝不足には寝不足なんですけど
 今は完全に眠ってしまうのも怖いので」

「パニック障害の関係ですよね。
 だけど無理はしないでくださいよ。

 薬の処方に抵抗を感じる方も実際多いですが、
 安定した生活の為には、しっかりと管理された中での使用なら問題はありませんから」


そう言って氷室先生は私の傍に近づいて腰をおろした。


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