【B】(第一夜完結)Love around ※第二夜準備中
16.傍に居る -飛翔-
塔矢を助けた後、
俺は周囲の連中が驚くほどに狼狽えていた。
俺自身も初めての体験だった。
そんな俺を的確に支えてくれたのは鷹宮の先輩たち。
塔矢の母親の先輩であるポジションも重なって、
水谷総師長の口添えで、真っ先に院長先生が動いてくれた。
俺自身も徳力のマンションの一角に、塔矢親子を招き入れて保護することも
視野に入れていたのに……それよりも先手にうたれてしまった。
「早城先生、塔矢さんを助け出してくださって有難うございます。
芙美も喜んでますわ。
それで李玖ちゃんは?」
「今は由貴の家で休ませています」
「そう。
だったら芙美、今の間に必要なものだけ運んでしまいましょう。
雄矢さんにお願いして私が住んでいるマンションの空き部屋に入居させて頂けることになったの。
芙美の家は、ほらっ住所も公開されてしまってるし、誰でも出入り自由でしょ。
あんなことがあった今は危ないわ」
「でも先輩、うちにはアンジュが猫がいますわ」
「えぇ、知ってるわ。年賀状で可愛い猫ちゃんの写真見てるもの。
大丈夫、アンジュちゃんも迎えに行ってあげないと」
二人の会話をききながら、俺は「手伝います」と伝えるタイミングを考えていた。
「おっ、お揃いだな」
「こんばんは」
会話を遮る様に二人の前に姿を見せたのは、嵩継さんと勇。
「勇、お前……」
「水谷さんに電話で召喚されたんだよ。
嵩継さんも」
そう言うと、二人は水谷さんの輪の中へと入っていく。
「俺も手伝う」
何とか言葉で伝えると、そのまま嵩継さんが誰かから借りてきたらしい
トラックとその後ろに並ぶ、勇の愛車。
「飛翔はどうする?乗ってく?」
「あぁ」
言われるままに勇の助手席へと乗り込むと、後部座席には水谷さんと塔矢の母親が乗り込んだ。
ナビに案内されて到着した家。
築年数がたってそうな印象の建物へと玄関から母親が入ると、
鞄から取り出した鍵を差し込んで静かにまわす。
「にゃあー」
っ真っ白い猫が出迎えに来て、母親の足元に顔を擦りつける。