【B】(第一夜完結)Love around ※第二夜準備中
「一人だと、ろくなこと考えないか?」
その問いかけに、塔矢はただ小さく頷いた。
「傍に居る」
だから今は無理するな。
アイツがセッションの中で語った内容は、
どれほどアイツ自身が裏切られて傷ついたか痛いほどに伝わってくる内容だった。
だが……由貴が、アイツの傷はゆっくりと塞いでくれるだろう。
そしてそんなアイツの隣で、
俺はただ寄り添うように傍に居たいと思う。
「えっ?」
戸惑ったような表情を浮かべる塔矢の唇を奪いそうになる俺自身を
必死に抑えながら俺は冷静を装い続けた。
今はまだダメだ。
「俺の連絡先だ。
電話に登録しておいてくれ」
そう言ってメモっていたカードを塔矢に握らせると、
俺は運転席から降りる。
慌てて助手席のドアを開けて立ち上がりかけて、
よろめいた塔矢を回り込むように抱えこむと、
今度は支えながらゆっくりと立ち上がらせる。
「……すいません」
「気にするな。
帰りも送る。終わったら俺宛に連絡を」
それだけを伝えて、関係者入口まで共に向かうとそこで俺たちは
それぞれの場所へと移動した。
義務ではなく……純粋な思いで、
誰かの傍に居たいと望んだ俺自身。
『傍に居る』
たったこれだけの決断に、
こんなにも鼓動が高鳴って行くのを感じていた。