【B】(第一夜完結)Love around ※第二夜準備中
「早城さん、約束通り来てくださってるわね。
ほらっ、お待たせしてはダメよ。
いってらっしゃい。李玖」
お母さんは私の手荷物をもって、背中を押すように玄関へと見送る。
鞄を受け取って玄関を出ると、階下に続くエレベーターに乗り込むものの
何故か妙な緊張感を感じる。
『1階エントランスホールです』っとエレベーター内の音声が響いて、
ゆっくりとドアが開くと私は、深呼吸をして一歩を踏み出す。
「おはようございます。塔矢さま」
マンションのスタッフが私に近づいてくると、
そのまま早城先生が待つ場所へと送り続けてくれた。
「1分遅刻だな」
そう言って待つ早城先生は、真っ白い高級車に体を持たれさせながら
私を待っていてくれたみたいだった。
「1分って……。
すいません。でも先生が迎えにいらっしゃるなんて」
「昨日、伝えたはずだが……。
まぁいい、どうぞ」
先生はそう言うと、当たり前の様に助手席のドアを開けた。
「えっと」
多分……乗れって言ってくれてるんだよね。
先生を見て、軽くお辞儀をした後
ゆっくりと助手席へと乗り込むと、先生は助手席のドアを閉じて
運転席へと滑り込んでエンジンをかける。
エンジンをかけた途端に、車内に響くのは洋楽みたいだった。
車はすぐに走りだして、目的地の鷹宮総合病院へと向かう。
車内に響くのは英語の音楽。
会話一つない車内は緊張してしまう。
だけどどうしていいかわからなくて、
私は車窓から流れる景色を見つめように視線を向ける。
「母が君の為にサンドウィッチを作ったらしい。
後部座席の紙袋に入っている」
突然、先生が運転をしたまま呟く。
早城先生のお母さんがサンドウィッチ?
誰に?
私に?
「あっ、有難うございます」
戸惑いながらお礼を呟くと、先生は後部座席へと体をひねる。
その方向へと自分の体を動かして視線を向けると、
後部座席の足元にあった紙袋の取っ手を掴んで持ち上げた。
膝の上において、紙袋の中を覗き込むと
その中には鮮やかな色遣いのサンドウィッチが姿を見せる。
「有難うございます。
美味しそうですね」
「朝食まだなら食べていいぞ」
朝ご飯は食べてきたけど、もう少し入る余地はあるはず。
食べないよりは、この場は食べたほうが先生も喜んでくれるような気がして
私は厚焼き玉子が挟まった玉子焼きサンドを手に取って口元へと運んだ。
分厚いボリュームのサンドウィッチは、
甘い卵焼きにレタス・きゅうりが挟まれていてあっと言う間に一切れを食べ終えてしまった。
一切れだけで終わらせようと思っていたのに、
海老カツサンド、白身魚フライサンドと続いて、最後にもう一度玉子焼きサンドを完食してしまった。
「ごちそうさまでした。
とても美味しかったです。
卵焼きが分厚くて、甘くて美味しかったです」
勢いで完食してしまったサンドウィッチ。
流石にお腹はパンパンだったけど、それでせも美味しいと思って食べることが出来たのは幸せで……。
だけど後でじゃなくて、今ここで食べたいって思ったんだろう。
早城先生を喜ばせたかったって……何、私先生のこと意識してるんだろう。