【B】(第一夜完結)Love around ※第二夜準備中


暫くすると、聞き慣れた声がノック音の後から聞こえる。



「李玖、もうアンタって子は心配させないの」


っと駆け込んできて、私をギュっと抱きしめてスキンシップをはかるのは
指導係の殿村さん。


「殿村さん……」

「もう、この子ってば本当に心配ばかりかけるんだから。
 総師長、この度は塔矢の為にいろいろとご尽力いただきまして
 有難うございます」


そう言って、殿村さんは私の為に深く頭を下げる。



「私は私が出来ることをしただけですよ。
 殆どは院長先生のご協力です。

 私がしたことなど殆どありませんよ。
 ですが、この件の一番の功労者は何を言っても早城先生でしょうね」


っと水谷さんは意味ありげに口にする。



「えっ?早城先生?
 早城って言ったら……あの厳しくて有名なクールビューティー?

 その先生が、李玖の為にいろいろとやってくれたって言うの?

 ったく、アンタたち何時から付き合ってたのよ」


えっ、付き合うも何も、付き合ってないし。
先生が私に関わってくれたのは、単なる気まぐれだと思うし。




「殿村さん、早速だけど塔矢さんを診察室へ。
 その後、診察の結果次第で今日仕事をするかどうか決めましょう」



そう言うと、殿村さんはすぐにビジネスモードに切り替えて私を診察室へと案内する。



「失礼します。塔矢李玖をお連れしました」



殿村さんの言葉の後、診察室で一通りの検査を受けて総師長室で待ち続けた。


ソファーで待っている間が、死刑宣告みたいにも思える。
私が助けられた状況が状況で最後の記憶が記憶。


あの場に居た男に、香穂の指示でレイプされてしまったのか未遂で終わっているのか
現段階ではわからなかったから。



ちらりと時計を見つめると、もうすぐお昼に近づこうとしていた。




ふいに総師長室に電話が鳴り響く。


私の向かい側に座っていた水谷さんは立ち上がって、
受話器を取ると、少し言葉を交わして電話を置いた。




「結果が出たそうですよ。
 参りましょうか?」



促されるままに赴いた先はカンファレンス室。




内側から鍵かかかるその部屋で私は病院長と総師長、
そしてお母さんと一緒に検査結果を聞くことになる。



検査データーと一緒に結果を聞くものの、
危惧していた最悪の事態にはなっていなかったことを知り、
思わず涙が零れる。



「本当に有難うございました」



お母さんは深々と頭を下げる。




「塔矢さん、貴方の身に起こったことは決して軽い出来事ではなかったけれど
 それでもこの結果は良かったといってもいいわよね。

 検査結果も異状なし。
 午後からの仕事はどうしますか?」



総師長の言葉に、お母さんの方を向いて軽く頷くと
お母さんも頷き返してくれる。



「決まってるみたいね。
 だったら午後から、塔矢さんは殿村さんと一緒に外科病棟で仕事を。

 確か早城先生は18時までだったわね。
 その時に、一緒に上がりなさい」


また早城先生の名前……。



なんか、計画的に総師長にはめられてる気がしなくてもないんだけど……
それでも嫌じゃない。



何故か、今は早城先生の名前を聞くたびに
ドキドキしてる私がいるから。
< 73 / 90 >

この作品をシェア

pagetop