【B】(第一夜完結)Love around ※第二夜準備中
その後、午後の病棟業務を殿村さんに教えられながら最後まで終えると
18時を過ぎて、ステーションへと早城先生が姿を見せた。
「塔矢あがりだろう。
送ってく」
そう言って私に話かけてくると、
ステーションに居た看護師の視線が一斉に集まる。
もう……先生がそんなことやるから、
地味子でいたいって思ってた最初の願いなんてめちゃくちゃじゃない。
心の中で腹をたてながらも、
愛する心は、そうやって先生が迎えに来てくれたことに嬉しくて。
「ちょっと、塔矢……アンタ何時の間に早城先生の恋仲になってたのよ」
なんて早城先生のファンクラブに属してるお局様から声をかけられる。
ひぃーっ。
「はいはいっ。そこまで。
病み上がりの塔矢をそんなに虐めないでちょうだい。
塔矢は私の大切な後輩で友達よ。
そして私たちの仲間でしょ。
各自、持ち場に戻りなさい。
引き継ぎ入るわよ」
殿村さんの声がステーションに響くと、集まってた看護師たちは各自持ち場へと
慌ただしく戻って行った。
「ほらっ、李玖。
アンタも早く王子様と帰りなさい。
気をつけてね。お疲れ様」
そうやって殿村さんに追い出されるように、ステーションを後にした。
「えっと、更衣室で着替えてきます」
「あぁ、車に居る。来れるな」
「はい」
待ち合わせ場所を決定して、慌てて着替えを済ませると
駐車場の早城先生の車へと走った。
「お待たせしました」
運転席のドアのガラスをノックして、
その後、前かがみになって必死に呼吸を整える私。
なんでだろう。
昨日と同じ今日のはずなのに、
今日は凄く色鮮やかに輝いて見える。
「走ってきたのか?」
窓ガラスがよっくりと下がって、早城先生の声が聞こえる。
「はいっ。
お待たせしたくなくて……」
「乗れ」
そう言うと、今回は内側から助手席のドアを開けてくれる。
先生の車内は、朝と同じように洋楽が流れていて
朝は気がつこうともしなかった、香りが広がっていた。
「えっと、お邪魔します」
挨拶をして乗り込むと、先生はマンションまで車を走らせてくれた。
その後も1週間以上先生は、マンションと病院の送迎を続けてくれた。
先生が当直やERの日も、時間を都合して送迎を続けてくれた。
そんな先生の手を煩わすことがなくなった、
愛車が修理を終えて戻ってきた日、何だか少し寂しさを感じた。
だけど……それでも、病院に辿り着くと私の視線は、早城先生を自然と追いかけてしまっていて
先生も時折、私と視線が合うと少し言葉をかけてくれる。