【B】(第一夜完結)Love around ※第二夜準備中
18.消えた女 -飛翔-
事件後、塔矢が鷹宮に復帰して一週間が立ったころ、
それまで当たり前の様に俺の役割だったアイツの送迎が必要なくなった。
アイツの愛車が修理を終えて戻ってきて、
アイツは今までと同じように、自分の車で通勤すると言い出した。
当然の様に思っていた当たり前の出来事が突然消えた。
アイツと一緒に過ごせる唯一の時間が消えて、
俺は……ガッカリしているのか……。
本来なら、女に現を抜かして甘えてる場合じゃない。
もっと腕を磨いて、
医者として経験値をがむしゃらにつけたいそんな時期じゃないか。
塔矢に割いていた時間を、勉強に割けるだろう。
今までのように戻るだけだよ。
そう必死に言い聞かせながら、勉強に明け暮れる。
あの日以来、一週間ほどは自宅帰ることもせずに医局に寝泊まりしながら
勉強と仕事に明け暮れた。
今まで勝手なことをさせて貰ってたお詫びも兼ねて、
シフトを交代した結果、鬼のような勤務になってしまったがそれは後悔していない。
塔矢とはあの後、何度職場ではあっては会話をしていたがここ数日は見ていないな。
「お疲れ~。悪かったなー、早城。シフト交代させて。
いいぞ、俺が引きつぐぞ」
「お疲れ様です。
嵩継さんこそ、氷夢華【ひむか】さんの機嫌なおりましたか?」
氷夢華さんは嵩継さんの婚約者であり、うちの病院の放射線技師。
お二人は一週間後に結婚式があげる予定だ。
だけど二度ほど、結婚式の打ち合わせを俺のせいで氷夢華さん一人に任せてしまって
花嫁は機嫌を損ねた。
そんな氷夢華さんの機嫌回復の為に、交代したのが昨日のシフトだ。
「あぁ、治った治った。
買い物でアイツの服と靴買わされたがなー。
なんで女の服は、あんなに高いんだよったく」
なんて言いながらも、嵩継さんは楽しそうで。
「じゃ、俺、ステーションに顔を出して上がります」
「おぉ。
今日はちゃんと帰宅して寝ろよ」
「お疲れ様です」
そう言ってERを後にすると、俺は外科病棟内のステーションへと顔を出す。