【B】(第一夜完結)Love around ※第二夜準備中
俺は慌てて着替えを済ませると、部屋を飛び出して地下駐車場へと向かうと
車を発進させて、塔矢の自宅へと向かう。
自宅近くの空き地に車を停めて、吹きだす汗を抑えながら
塔矢の姿を探すように周辺を探し続ける。
公園にも立ち寄って一通り、探し回るもののアイツの姿は見当たらなかった。
再び、塔矢の自宅へと足を向けると、そこには仕事を終えて帰宅したアイツの母親と出くわした。
「こんにちは」
「まぁ、早城さん。
わざわざこんなところまで」
「今、李玖さんはどちらにいらっしゃいますか?」
思わず訪ねる語尾に力が入る。
一刻も早く見つけ出したい。
「わざわざ李玖に会いに来てくださったんですね。
あの子は今、自分でマンションを借りて必死に独立しようとしています。
ですから幾ら母親でも、私は貴方に住所を教えることは出来ません」
「わかりました。
では住所は聞きませんので、今すぐ、李玖さんと連絡を取っていただけませんか?」
「……何かあったのですか?」
俺の言葉に警戒心が芽生えた母親は、不安げに告げる。
「今、時雨から連絡が入り、施設で観察療養しているはずの清水香穂が居なくなりました。
警察では、李玖さんとの接触を危惧しているようで、時雨が俺の元に連絡を寄越しました」
その言葉に慌てて母親は家の中へと駆け戻り、携帯電話を握りしめて走ってくる。
「今、李玖の携帯に連絡します」
っと震える指先でボタンを操作すると、電話は発信音を響かせる。
電話か……俺としたことが、そんなことすら忘れていたのか。
送迎をしていた間に、交換し合った電話番号を今更のように思いだしながら
「重症だな」っと一人ごちる。
「李玖、出ませんね。
早城さん、ついてきてください」
そう言うと母親は玄関を飛び出して、自宅から五分ほどのところにあるマンションへと入っていく。
申し訳程度に、オートロックと管理人が存在するこじんまりしたマンション。
外の機械で、パスワードを打ち込んで外の硝子戸を開くと
そのままエレベーターに乗り込んで、塔矢の部屋らしき場所へと向かう。
そこでチャイムを押しても、中からアイツが出てくる気配はなかった。
母親はそのまま合鍵を使って、部屋の中に入る。
「李玖、居るの?」
アイツの名を呼びながら、部屋を探し回るものの居ないのか
首をふって玄関へと戻ってきた。
アイツの部屋の鍵をかけて、再び一階へと降りると管理人室のチャイムを押して
塔矢が帰って来ているかどうかを質問する。
慌てて防犯カメラを遡って確認する管理人によると、
彼女がマンションを出たのが14時前。
そしてそれから、まだ帰宅していない。
「14時前に出掛けていたのなら、
もしかしたら李玖は我が家に帰って来ていたのかもしれないわ。
今日はあの子の父親の命日だから」
そう言って、塔矢の母親は目を伏せた。
「俺も心当たりを探してみます。
お母さんは、家の方に戻っておいてください。
何かわかれば連絡しますから」
そのまま母親とその場所で別れて、
実家近くの駐車場まで走り続ける。
駐車場まで走りながら、塔矢がもし清水といると仮定して
二人がいそうな場所を想像していく。
そして思いついたのは、アイツが監禁されていたあの材木倉庫。
車に乗り込んで、慌てて時雨に連絡を繋げて
アイツの新しい所在地と、母親の話、管理人の証言を伝えて
俺の予想を伝えた。