【B】(第一夜完結)Love around ※第二夜準備中
19.抱きしめられて -李玖-
実家前で出逢ってしまった香穂と近所の公園に向かった。
だけどその公園は、時間が夕方と言うこともあって
球遊びをする子供たちや、ウォーキングや散歩をしている人たちが多く居て
ゆっくりと会話を出来る場所もなかった。
「香穂、座るところがないね。
場所変えよっか」
「わかった……だったら、人通りが少ない場所知ってる。
あの日、李玖を連れ込んだ場所覚えてる?」
その香穂の言葉に体は一瞬硬直したものの、
怖さと同時に、ちゃんと自分のことを知りたいと望む思いも重なって
香穂の言葉に同意した。
「タクシーで移動しよう。
電車やバスなど不便な場所だから」
香穂の言葉に、念のために居場所を伝えようと
鞄やポケットを手探りするものの、
マンションを出た時には持っていたはずの携帯電話が見当たらなかった。
えっ?
私、携帯どうしたんだろう。
実家のソファーで、サイレントにして触りながらお昼ご飯食べて……。
実家に忘れた?
そう思って取りに戻ろうと思った時「タクシー来たよ」っと
香穂の声が聞こえ、私はそのままタクシーへと乗り込む形になった。
家からドンドンと、都心部を離れて山道へと入っていく。
木々が生い茂って、天然のトンネルみたいになってるその場所を抜けて
辿り着いた場所は、私にとって今も見覚えのない場所だった。
「お客さん、到着しましたけどこんなところでいんですか?」
タクシーの運転手さんが、不思議そうに見つめながら言葉を紡ぐ。
「あっ、この場所で構いません。
はいっ、お釣りはいりませんので」
っと香穂はタクシーの運賃を財布からお札を取り出して支払うと、
そのまま建物の中へと入っていく。
慌てて私も追いかけるように、香穂の後に続いた。
入口のさび付いた門らしきものを開けて、
見知った場所の様に香穂は奥へ奥へと入っていく。
そして部屋らしきドアを開けて、
ポケットから取り出したライターで蝋燭に火をつけた。
「適当に座って。
今、飲み物いれるから」
香穂は荷物を適当に椅子の上に置くと、
その中からお茶のスティックらしきものを取り出す。
それをコップの中に注ぎ、
同じくカセットコンロの上に鍋を置いて沸かしたお湯を入れてお茶を準備する。