【B】(第一夜完結)Love around ※第二夜準備中
預かって部屋から出て行った担当者が、再び姿を見せて先生にカードを返すと
先生はゆっくりと立ち上がる。
それに合わせて、私の椅子もゆっくりと後ろに下げられて
緊張しながら会釈をしながら立ち上がった。
「ごちそうさまでした」
エレベータで下まで降りると何時の間に手配したのか、
運転代行サービスの人らしい人がゆっくりと先生お辞儀をする。
先生もさっき、ワインを飲んでたからね。
先生から預けられた鍵を受け取って、
私たちを後部座席へと乗せると、その人は手慣れた様子で運転席へと乗り込む。
「どちらへ参りしまょぅか?」
「悪いな。あの場所へ」
先生はその運転手と知り合いなのか意味ありげな言葉を紡ぐと、
車は何時ものように洋楽を響かせながら動き出す。
いつもと違うのは、先生と後部座席に一緒に並んで座っているということ。
それだけでドキドキして、鼓動が高鳴りすぎて自分がおかしくなってしまいそう。
そんな時、先生の体が私の肩へと傾いて伸し掛かってくる。
えっ……戸惑いながら、視線を向けると先生は疲れて眠ってしまっているみたいだった。
本当なら膝枕とかの方がいいのかも知れないけど、
多分、それをしようとしたら起こしちゃうよね。
そんな先生の温もりを感じながら、
私は愛しいと言う感情の意味をはじめて理解できた気がした。
車は坂を上り続けて、何処かの展望台らしい駐車場で静かに車を停めた。
「先生、到着したみたいですよ」
ようやく声をかけると、先生は慌てて体を起こして「すまない」っと呟いた。
「お疲れのところ、助けに来てくださったんですね。
こちらこそ、すいません」
素直に口から出る謝罪。
「気にするな」
そう言うと、スーっと後部座席のドアが開かれて
先生は私をリードするように座席を後にする。
先生の車から離れて、夜の展望台へと続く細道を歩いていく。
その場所は、星空が凄く綺麗に見えて思わずはしゃいでしまいたくなる空間だった。
先生の場所から離れて先に駆け出すと、
両手を大きく広げて、夜空を眺めながらクルクルとその場で回転する。
私の動かす回転にあわせて、スカートの裾が広がりを見せているのを感じる。
掴みたくなるような星空。
こんなの見たのは初めてかもしれない。
そして当たり前の様に、回転のし過ぎでよろける私の体。
そんな体をまた温もりが包み込んだ。
「そんなに、はしゃぐからだ」
「すっ、すいません……」
「いやっ、はしゃいでもいい。
君を喜ばせる為に来たのだから」
えっ?
先生、今何言ったの?
次の瞬間、私は再び先生の腕の中にすっぽりと包まれた。
「傍に居ろ。
ずっと守ってやる」
そう言って先生は、私の唇に長い長いキスをした。
あの出来事から男性に触れられるだけで、
震えてしまっていた私。
だけど今は……こうやって先生の腕に包まれてる。
その温もりに抱きしめられて、
私は初めて本当の幸せを噛みしめていた。