哀しみを越えて
3.幸せの夏。
『ねぇねぇ…会いたい。』
『俺も会いたいよ』
電話ではただひたすらに相手を求め合った。
隣に夏向がいないと私は落ち着けなかった。
朝も夜も夏向を求めた。
私は仕事がなく唯一、部屋にこもって絵を書いてそれを展示会に応募する。
それとコンビニでのアルバイトが日課。
だけど、彼は仕事をしている。夜、帰ってくるのも遅い。
会える日なんて少なかった。
それでも、夜の電話は欠かさなかった。
そして、それが毎日の楽しみになっていた。
毎日、『大スキ』って言われる。だけど私はそれを聞くと不安になる。
毎日言うわからこそ、不安になる。
もし、言わなくなってく日が来たらどうしよう…。
いつかそんな日が来てしまうのではないだろうか。そう不安になる。
だけど、そう言ってくれる夏向が私のタカラモノ、そして素晴らしい恋人だった。
『ねぇねぇ、知亜』
『ん?どうしたの?』
『来週の花火大会の日。仕事早く終わりそう!俺と一緒に見ない?』
『見る見る!』
『よーし!決まりね!忘れないでよ?』
『忘れないよ』
『ホントに忘れない?』
『忘れるはずないでしょ!』
夏向は私との約束を忘れることは絶対になかった。
毎日、充電がなくなる間際まで会話が続いた。
もう夏向がいれば他に何もいらなかった
。
始めて人を抱きしめたり、必要とした。
潔癖症の事など、もうどうでもいいくらい。
夏向ならよかった。夏向だからよかった。
そしてなにより今は、花火大会が待ち遠しかった。
久しぶりに夏向に会える。
あと4日…。あと3日…。あと2日…。明日…。
寝る前はそう考えながらカレンダーを目で追った。
夢で見ている夏向はどんな夢を見ているかな?
私は寝るときも幸せに満ちているよ。
めざましが響く部屋。目が覚めてカーテンを開けた瞬間、
部屋に日差しが差し込んだ。天気は晴天。
今日が待ちに待った花火大会当日。
朝からこの街のビーチには車が行き来していた。
私はいつもどおり、コンビニのコーヒーを開けて
一日の始まりを迎える。
『今日は花火大会…。』
夕方に近づくにつれ、ドキドキしてきた。
7時から打ち上げがあるので、6時を過ぎてから
浴衣の準備をしていた。
6時30分を迎えた頃、私はもう海へ向かっていた。
待ち合わせのビーチの入口へ向かって。
その時、夏向からの一本の電話が来た。
私はすぐに微笑みながら電話にでた。
今すぐにでも抱きしめたい。
そんな愛しさを持っている彼からの電話は大好きだったから。
『ごめん。知亜』
最初の言葉が「ごめん」だった…。
疑問に思うのも当然。
『仕事の会議が急に入って、今から帰れなさそうなんだ…』
『わかった。頑張ってね。ばいばい』
偶然にも程がある・・・。
はじめに誘ってきたのはそっちなのに。
っと、愚痴しか最初は吐けなかった。
私はすぐに電話を切ってしまった。
携帯をとじた時には頬に涙がこぼれた。
…どうして。約束を破らないのが夏向だったのに。
そう思っているうちに夜空には次々と花火が打ち上がった。
結局、今年も花火大会は一人になってしまった。
花火は30分間、打ち上がった。
二人が夜空を指差しながら笑いながら寄り添うことを想像していた。
その夏向が居ない30分が私にとってはとても長いものだった。
何日にも前から楽しみにしていた瞬間が今、水の泡になってしまった。
それでも、彼は仕事で来れなかった。
「仕方ないか…」そう思っていても納得いかなかった。
帰りも一人がすごく怖く感じだ。
浴衣を来て一人で歩道を歩いていたとき、
1台の車が止まって、窓から話しかけられた。
『知亜…。』
それは夏向だった。
『ごめんね。もう終わっちゃったんだ…。』
『ううん。いいよ。』
『まず、乗ってよ。』
『うん』
車は彼の家へと向かっていった。
本当は会えただけで張り裂けるほどに嬉しいはずなのに。
嬉しさを表現できなかった。
そして静まる車のなか。
『本当は俺も浴衣着ようと、用意してたんだけど…。』
『そうなんだ』
『仕事からすぐきたから、着れなかった…。』
『いいよ。』
『いや…本当にごめんよ。本当は俺も知亜と見たかったんだよ。』
『うん』
私の素っ気ない返事も終わり、彼の家へとついた。
家の中は薄暗く、とても広かった。
そして寝室には大きなベット。
『ちょっとシャワー浴びてくるから、テレビでも見てて。すぐ来るから。』
『わかったよ』
私はテレビの前にあったソファーに座って彼を待っていた。
涙なんかもう出ない。ただ出るにはため息。
彼は風呂場から腰にバスタオルを巻いて来た。
『知亜、こっち』
そう言って、誘導された先にはベット。
『今日は本当にごめんね。愛してるよ』
始めて、人から「愛してる」と言われた。
私は夏向の目を見ていった。
『私も』
私の身体の力は徐々に抜けていった。
ただ夏向に全部、捧げていた。
…時間が止まれば、このまま繋がっていられる。
私が目を覚ました頃には、もう夏向は起きていた。
今日は休日なのでソファーに座ってニュースを見て、のんびりしていた。
『おはよう!知亜』
『おはよう。夏向』
『昨日のこと、覚えてる?』
『まぁ。』
『知亜にとって、俺は何?』
『タカラモノ』
『ありがとう』
忘れることはできないよ。
夏向と過ごした夜は。
『俺も会いたいよ』
電話ではただひたすらに相手を求め合った。
隣に夏向がいないと私は落ち着けなかった。
朝も夜も夏向を求めた。
私は仕事がなく唯一、部屋にこもって絵を書いてそれを展示会に応募する。
それとコンビニでのアルバイトが日課。
だけど、彼は仕事をしている。夜、帰ってくるのも遅い。
会える日なんて少なかった。
それでも、夜の電話は欠かさなかった。
そして、それが毎日の楽しみになっていた。
毎日、『大スキ』って言われる。だけど私はそれを聞くと不安になる。
毎日言うわからこそ、不安になる。
もし、言わなくなってく日が来たらどうしよう…。
いつかそんな日が来てしまうのではないだろうか。そう不安になる。
だけど、そう言ってくれる夏向が私のタカラモノ、そして素晴らしい恋人だった。
『ねぇねぇ、知亜』
『ん?どうしたの?』
『来週の花火大会の日。仕事早く終わりそう!俺と一緒に見ない?』
『見る見る!』
『よーし!決まりね!忘れないでよ?』
『忘れないよ』
『ホントに忘れない?』
『忘れるはずないでしょ!』
夏向は私との約束を忘れることは絶対になかった。
毎日、充電がなくなる間際まで会話が続いた。
もう夏向がいれば他に何もいらなかった
。
始めて人を抱きしめたり、必要とした。
潔癖症の事など、もうどうでもいいくらい。
夏向ならよかった。夏向だからよかった。
そしてなにより今は、花火大会が待ち遠しかった。
久しぶりに夏向に会える。
あと4日…。あと3日…。あと2日…。明日…。
寝る前はそう考えながらカレンダーを目で追った。
夢で見ている夏向はどんな夢を見ているかな?
私は寝るときも幸せに満ちているよ。
めざましが響く部屋。目が覚めてカーテンを開けた瞬間、
部屋に日差しが差し込んだ。天気は晴天。
今日が待ちに待った花火大会当日。
朝からこの街のビーチには車が行き来していた。
私はいつもどおり、コンビニのコーヒーを開けて
一日の始まりを迎える。
『今日は花火大会…。』
夕方に近づくにつれ、ドキドキしてきた。
7時から打ち上げがあるので、6時を過ぎてから
浴衣の準備をしていた。
6時30分を迎えた頃、私はもう海へ向かっていた。
待ち合わせのビーチの入口へ向かって。
その時、夏向からの一本の電話が来た。
私はすぐに微笑みながら電話にでた。
今すぐにでも抱きしめたい。
そんな愛しさを持っている彼からの電話は大好きだったから。
『ごめん。知亜』
最初の言葉が「ごめん」だった…。
疑問に思うのも当然。
『仕事の会議が急に入って、今から帰れなさそうなんだ…』
『わかった。頑張ってね。ばいばい』
偶然にも程がある・・・。
はじめに誘ってきたのはそっちなのに。
っと、愚痴しか最初は吐けなかった。
私はすぐに電話を切ってしまった。
携帯をとじた時には頬に涙がこぼれた。
…どうして。約束を破らないのが夏向だったのに。
そう思っているうちに夜空には次々と花火が打ち上がった。
結局、今年も花火大会は一人になってしまった。
花火は30分間、打ち上がった。
二人が夜空を指差しながら笑いながら寄り添うことを想像していた。
その夏向が居ない30分が私にとってはとても長いものだった。
何日にも前から楽しみにしていた瞬間が今、水の泡になってしまった。
それでも、彼は仕事で来れなかった。
「仕方ないか…」そう思っていても納得いかなかった。
帰りも一人がすごく怖く感じだ。
浴衣を来て一人で歩道を歩いていたとき、
1台の車が止まって、窓から話しかけられた。
『知亜…。』
それは夏向だった。
『ごめんね。もう終わっちゃったんだ…。』
『ううん。いいよ。』
『まず、乗ってよ。』
『うん』
車は彼の家へと向かっていった。
本当は会えただけで張り裂けるほどに嬉しいはずなのに。
嬉しさを表現できなかった。
そして静まる車のなか。
『本当は俺も浴衣着ようと、用意してたんだけど…。』
『そうなんだ』
『仕事からすぐきたから、着れなかった…。』
『いいよ。』
『いや…本当にごめんよ。本当は俺も知亜と見たかったんだよ。』
『うん』
私の素っ気ない返事も終わり、彼の家へとついた。
家の中は薄暗く、とても広かった。
そして寝室には大きなベット。
『ちょっとシャワー浴びてくるから、テレビでも見てて。すぐ来るから。』
『わかったよ』
私はテレビの前にあったソファーに座って彼を待っていた。
涙なんかもう出ない。ただ出るにはため息。
彼は風呂場から腰にバスタオルを巻いて来た。
『知亜、こっち』
そう言って、誘導された先にはベット。
『今日は本当にごめんね。愛してるよ』
始めて、人から「愛してる」と言われた。
私は夏向の目を見ていった。
『私も』
私の身体の力は徐々に抜けていった。
ただ夏向に全部、捧げていた。
…時間が止まれば、このまま繋がっていられる。
私が目を覚ました頃には、もう夏向は起きていた。
今日は休日なのでソファーに座ってニュースを見て、のんびりしていた。
『おはよう!知亜』
『おはよう。夏向』
『昨日のこと、覚えてる?』
『まぁ。』
『知亜にとって、俺は何?』
『タカラモノ』
『ありがとう』
忘れることはできないよ。
夏向と過ごした夜は。