恋するplants
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「じゃ、2人の実力をみるために好きな言葉でいいからかいてみようか?」
あれから、おじいちゃん先生が部室に顔を出し、俺と丸太さんはパイプ椅子に座り、半紙を目の前にしていた。
某チキンで有名なファーストフード店の創立者に似ているおじいちゃん先生は白髪の頭をポマードで整え、目には黒ブチメガネ、そして鼻の下にはしろい口髭を蓄えている。
恰幅のいい体型で、前に突き出たお腹を擦りながらどれどれと交互に俺と丸太さんの書を覗く。
初心者とはいえ、学校の授業で経験したことがあるのか丸太さんは躊躇せず、筆を握った。
俺も負けてはいられないと筆を持つ。
さて、何をかこうかと考えて「永」という字をかくことにした。
「永字八法(えいじはっぽう)」といい、「永」の字の中に基本の筆づかいが8つ入っている。
初めておじいちゃん先生に見て貰う字だ。
全体のバランスを考えて、点から始まり・・・最後ははらい・・・うん、
いい感じだ。
一息ついて筆を置く。
横を見れば、隣に座る丸太さんもかき終ったようだった。
俺と丸太さんを交互に見ておじいちゃん先生はフフフと笑い声を上げた。
「どれどれ、丸太さんの書から見てみようか」