恋するplants


 ナズナは鼻をすするとふぅと息をついて、足元に置いたカバンからピンクの包装紙に包まれた箱を出した。


 「友達として貰ってくれる?」


 バレンタインのチョコレートだった。


 ありがとうとお礼を言って箱を受け取った。


 ナズナはにっこりと微笑むと帰るねと立ち上がった。


 何か言わなきゃ、そう思ったのに上手い言葉が見つからない。


 ナズナは膝にかけていたマフラーを俺の首に巻きなおした。


 そのまま、俺の肩をぎゅっと抱きしめた。


 「芹、大好きだよ。これからもずっと友達でいてね」


 ナズナの柔らかい髪が鼻にあたり、甘い臭いに胸がとくんと疼いた。


 結局、俺は何も言えないままナズナに抱かれていた。


 ナズナが帰り、すっかり暗くなった周りにも気にせず、俺はぼぅとベンチに座っていた。


 自販機で買ったお茶はすっかり冷えてしまった。


 自分の出した答えはあれでよかったのだろうか?


 ナズナを抱きしめて付き合おうと言うこともできたはずだ。


 さっきのナズナは、心の中では俺のことが好きだと言ってくれていたんじゃないだろうか?


 ぶるぶると頭を振り、邪念を消した。


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