恋するplants


 日々緊張が高まるのと同じくらい楽しみな気持ちも膨らんでいくのがわかる。


 「本番までもう少しです。みなさん、心を1つにして、いい書をかきましょう」


 お爺ちゃん先生が優しく微笑むとみんな一斉にはいと返事をした。




  ★




 「筆を買いたいと思うんだけど、白根くん付き合ってもらえるかしら?」


 部活が終わって筆を水道で洗っていると、丸太さんに声をかけられた。


 どうやら家での練習用に自分の筆が欲しいらしい。


 「書道部のを持って帰って使っていいって言ってくれてるんだけど、自分のが欲しいなっと思って」


 丸太さんも俺と同じく、小学生時代に使ってた書道セットを開けてみたら見事にカビまみれだったらしい。


 学校の近くのホームセンターに売ってたっけ?と記憶を辿り、ふと閃いた。


 「俺のうちに筆余ってるけど、いる?」


 この間、離れに行ったとき、祖父の机の中に新品の筆があったのを思い出した。


 「そんな、悪いわ」


 と躊躇う丸太さんに、じゃ、ホワイトデーのお返しってことでどう?と訊いてみた。


 「まだホワイトデーじゃないけど・・・」

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