恋するplants


 ★

 
 それからのことはよく覚えていなかった。


 気付いたら俺は涙を流しながら丸太さんの手を握っていた。


 彼女の手はとても温かかった。


 「ぎっくり腰ですね、コルセットを巻いて、安静にしていて下さいね」


 あれから丸太さんが祖母を部屋に抱えていき、座敷に布団を敷いて祖母を寝かせてくれたらしい。


 動けなくなってしまった祖母が知り合いのお医者さんを呼ぶように丸太さんに頼み、今に至る。


 「ありがとうございました」


 お医者さんの帰りを見送り、玄関先で頭を下げる丸太さん背中を見つめた。


 ・・・しっかりしてるな・・・


 
 「落ち着いた?」


 居間のコタツに入り、丸太さんの淹れてくれたお茶を飲んだ。


 祖母が突然倒れて気が動転してしまい、泣いているところを見られてしまった。


 なんて情けないんだ・・・


 祖母も祖父と同じようになったらどうしようと思ったら頭が真っ白になってしまった。


 丸太さんの問いに頷くと、私、もうそろそろ帰るわねとコートを着始めた。


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