恋するplants
「・・・近くまで送ってく・・・」
丸太さんを見上げると彼女は首を振った。
「お婆さんの傍にいてあげて。私は平気だから」
丸太さんは表情を変えずに玄関に向かった。
慌てて彼女の後を追う。
「今日はありがとう・・・丸太さんがいてくれて、本当によかった」
靴を履く丸太さんの後ろ姿に声をかけた。彼女は振り向くと、
「大丈夫。ぎっくり腰で人は死なないわ」
そう言って優しい微笑みを向けた。
初めてみる丸太さんの表情だった。
どくんと胸が高鳴る。
・・・今の顔・・・そんな表情もするんだ・・・
「今日はご馳走様。じゃあ、また明日、学校で」
次の瞬間にはいつもの無表情な丸太さんに戻っていて、引き戸を開けると闇の中に消えて行った。
・・・さっきのって幻だったのかな?
祖母に丸太さんが帰ったことを報告した。
「婆ちゃん、ごめん。俺、何もできなくて・・・」
大丈夫だと祖母は首を振った。
布団を直して、祖母の皺くちゃな手を握った。
「丸太さん・・・優しくていい子ね」
祖母は目を細めた。