恋するplants


 中腰になり左手には取っ手のついた風呂桶を硯代わりに持ち、右手には普通より少し大きめの筆を握っている。


 歌のリズムに乗りながら頭をからっぽにして一気にかく・・・


 「豆田!」


 松ちゃん先輩の声がして思わず顔を上げた。


 お豆くんが松ちゃん先輩のかいた書の上に立っていた。


 「あぁ!!」


 お豆くんはパニックを起こし慌てて後ずさりした・・・あ!


 「何してんだよ、お前!」


 松ちゃん先輩の怒号が響き、観客席が一瞬ざわめく。


 小山さんが心配そうにちらりとこちらを向いた。


 お豆くんはまだ乾いていない書の上に立ってしまった。


 慌てたお豆くんは後ずさりしてしまい、ピンクの足跡が紙の上に残ってしまった。


 しかも、パフォーマンスは裸足で行うと決めていたのに彼は足袋を脱ぐのも忘れてしまったようだ。


 「ち」の横にキレイな足袋の足跡が2つ付いた。


 「旅立ち」の文字は「旅立ぢ」になってしまっていた。


 「落ち着いて!」


 まず一声を発したのは柊部長だった。


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