恋するplants
私に気付いたマルタが無表情であいさつをした。
無視したいところだったけれど、横には芹もいるし、人目もあったので、にっこりと微笑んであいさつを返した。
「白根くんもおはよう」
「お、おはよう。・・・じゃ、俺こっちだから、また!」
芹は片手をあげると自分のクラスの下駄箱の方へ走って行った。
何、あの慌てよう・・・つーか、マルタを見て頬赤らめてなかった?
まさか、芹、新しい恋を見つけたとか?よりによって相手はこいつかよ・・・私は隣に佇むずんぐりむっくりの女を見上げた。
彼女の名前は丸太すみれ。
新しいクラスの名簿に彼女の名前を見つけて私はがっくりと項垂れた。
はっきり言って私はマルタが苦手だ。
まず容姿、マシュルームカットにパンパンに膨れた顔、凛々しい眉。
ちょっと間違ったらお笑い芸人にいそうなキャラだ。
それに細身の私が隣に並んだら申し訳ない気持ちになるようなふくよかな体型。
私がマルタだったらコンプレックスの塊だろうなって思うけど、本人はそんなコンプレックスを物ともせず常に堂々としている。
その態度が図々しい感じがして更に嫌だ。
芹は何でこんな女を好きになったの?いやいや、きっと私の勘違い。
目の錯覚だ。
今まではかわいい私のことが好きだったんだから、急にこんな女に乗り換えるワケがない。
落ち着けナズナと自分を宥めて、下駄箱の扉を開けた。