恋するplants


 小山紫苑に近づいて、彼が手に持っているものがわかった。


 「それ、ビンボウ草でしょ・・・毎朝、毎朝、あなたが入れてたの?」


 いや、その、これは・・・小山紫苑は言葉に詰まる。


 この花を摘むとビンボウになると言われている、そこら辺に咲いている雑草。


 登校する度に私に嫌な思いをさせてた雑草を送っていたのが小山紫苑だったなんて。


 「・・・私の事、好きなフリしてからかってたんですか?」


 思っていた以上に冷たい声が出た。


 「春風さん、何か誤解・・・」


 「ふざけるな!」


 私は小山紫苑が手にしていたビンボウ草を掴み取ると近くのゴミ箱に投げ捨てた。


 「あんたなんか大嫌い」


 叫ぶように言うと、足早にその場を後にした。


 小山紫苑は何も言わずその場に立ち尽くしていた。


 何なの?小山紫苑も楠と一緒なの?自分のファンが嫌っている子を陥れようとしたの?私のことを好きなフリをして?芹のことまで話したのに・・・頭の中がごちゃごちゃしてきた。


 もういい。


 もう何も考えたくなかった。


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