恋するplants


 「紫苑くん!・・・た・・・大変だ!!誰か!!!」


 体育館の反対側からびっこを引きながらこちらに向かってきた小石川は小山紫苑の様子を見て騒いだ。


 「大丈夫、血は出てるけど傷は浅い。ムック、騒ぎを大きくしないで」


 小山紫苑は額を抑えて、小石川は制した。


 小山紫苑はハンカチを持ってなかったようなので、スカートのポケットからハンカチを取り出し、小山紫苑の額に押し付けた。


 こんな時でも爽やかに小山紫苑はありがとうと微笑む。


 「マルタから春風が女子たちに連れて行かれたから、紫苑くんを呼んでくれって頼まれたんだ」


 小石川が興奮しながら答える。


 マルタが私たちの後を尾行して小石川に場所を教えてくれたのだ。


 3人で落ち合う予定がファンの子の1人が私に手をあげたのでマルタは飛び出してくれたらしい。


 小山紫苑は自分を犠牲にしてマルタを庇った。


 運悪く楠が振りかざしたパイプ椅子が額に当たり流血。


 マルタは小山紫苑に押し飛ばされたショックで気絶してるみたいだ。


 「ご・・・ごめんなさい・・・私・・・気が動転してしまって・・・」


 楠は焦点の定まらない視線でずっと謝り続けてる。


 小山紫苑は楠に向き直り、地面に落ちたパイプ椅子を拾った。


 「椅子は座るためにあるものだ。こんなことして君の気は晴れた?」

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