恋するplants


 去年は隣に檜がいたのに・・・今年は1人だ。


 そう考えてたら悲しくなってきた。


 もう、帰ろうかな・・・こんなことならわらびとすみれちゃんと芹くんと草香家のキャンプに一緒に行けば良かった。


 こぼれてくる涙を拭って、傘を開こうとした時ーーーーー、


 「うわーーーー。すごい雨だなーーーー」


 ばしゃばしゃと水溜りの上を走る音と共に、後ろから男の人の声がした。


 振り返ると暗闇の中に影が動いた。


 目を凝らして見ると、バックパックを背負った背の高い男の人が立っていた。


 その人はバックパックの中からタオルを出し、ごしごしと豪快に頭を拭いた。


 呆然としてその人を見ていると私に気付いたのか人懐っこい笑みを浮かべて近づいてきた。


 「すごい、雨だなー、これじゃ花火中止かな?」


 私は辺りを見回した。


 周りに人はいないっていうことは私に話しかけてるんだよね。


 「はい、アナウンスで中止だって言ってました」


 おそるおそる答えると、そっかと隣で相槌を打つ。


 お酒の匂いがするなと思ったら片手にチューハイの缶を持っていた。


 近くで見たらその人は首周りのだらしないボロボロのTシャツを着ていた。


 スニーカーも汚れてるし、無精ひげも生えている。

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