恋するplants


 「ごめんなさい」


 しがみついた手を離そうとしたら彼が強く手を握ってきた。


 「君、かわいいね」


 気付くと彼の顔が近くにあった。


 彼の吐息が鼻にかかり、微かにお酒の匂いがする。


 「あの、私、彼氏います」


 キスされそうな距離におののき、そんなことを口走っていた。


 彼は一瞬、目を見開くと、にこりと笑った。


 「でも、すっぽかされたんだろ?」


 そうだ。


 大切な記念日を檜は忘れていた。


 彼の顔がどんどん近づいてくる。


 逃げられないと思った。



 ドーン



 「ごめん、俺、酔ってるんだ」


 再び雷が鳴り、音の大きさに身がすくんだ。


 彼がぎゅっと私を抱きしめ、彼の唇が私の唇を塞いだ。


 柑橘系のお酒の味がした。

< 235 / 459 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop