恋するplants
「ごめんなさい」
しがみついた手を離そうとしたら彼が強く手を握ってきた。
「君、かわいいね」
気付くと彼の顔が近くにあった。
彼の吐息が鼻にかかり、微かにお酒の匂いがする。
「あの、私、彼氏います」
キスされそうな距離におののき、そんなことを口走っていた。
彼は一瞬、目を見開くと、にこりと笑った。
「でも、すっぽかされたんだろ?」
そうだ。
大切な記念日を檜は忘れていた。
彼の顔がどんどん近づいてくる。
逃げられないと思った。
ドーン
「ごめん、俺、酔ってるんだ」
再び雷が鳴り、音の大きさに身がすくんだ。
彼がぎゅっと私を抱きしめ、彼の唇が私の唇を塞いだ。
柑橘系のお酒の味がした。