恋するplants
「自分が落ち込んでたりするとさ、無償に自然に触れたくなるんだよね。こういった花だったり、山だったり」
アイスを舐めながら桂さんが語り始めた。
「世界には涙が出てくるくらいキレイな自然がたくさんあって、そういった場所を訪れる度に、俺ってすごくちっぽけな存在なんだって思わされるんだ。俺なんかちっぽけ過ぎて、うじうじ悩んでたことがバカらしくなってくるんだ。頭の中をリセットできるんだ。それが俺が旅に出る理由かな」
「桂さんは自分探しの旅に出てるんだって前に檜に訊いたことがあります」
「自分探し?そんな恥ずかしいことする器じゃないって、言ってみれば、自分をゼロにする旅だよ」
「ゼロ?」
「しがらみとか悩みとかまっさらに洗い流して、生まれ変われるんだ」
「今度のオセアニアの旅が終わったらどうするんですか?」
「大学戻って勉強して、普通に就職するだろうな」
「普通に戻っちゃうんですか?」
「まぁ、そうかな。で、お金が溜まったら海外旅行に行くかな。まだ行ってない国がたくさんあるし。地球をほぼ1周したら、自分がいかに恵まれた国に生まれたのかってことも実感できたし」
「そうですか」
「でも、本当の所はまだ解らない。オセアニアで何かこれからの人生を左右することに出会うかも知れないし、俺の未来は無限に拡がってると思うから」
「ステキですね」
「何か、熱く語っちゃったな。引かなかった?檜には内緒にしてて、恥ずかしいから」