恋するplants


 「お待たせ、どうしたの?」


 わらびの表情が浮かなかったので、少し心配になった私は彼女の顔を覗きこむんだ。


 小柄で下手したら小学生に間違えられてしまう位のわらびは大きな目を私に向けた。


 うっすらと涙が浮かんでいるように見えるのは気のせいだろうか?


 「よもぎくんと喧嘩したの?」


 よもぎくんはわらびの彼氏だ。


 今日も映画館で一緒にいるのを見かけた。


 映画館で・・・あ、もしかして・・・。


 わらびは私の問いかけにふるふると首を振って否定した。


 「・・・よもぎくんは知らないの」


 ぽつりとわらびが呟いた。


 さっき、思いついた答えが確かなものになっていく。


 「今日、映画館できのこを見かけたの。手、繋いでた・・・ひのきんじゃなかった」


 ひのきん・・・わらびは檜のことをそう呼ぶ。


 「あの人は誰なの?」


 誰?わらびはまっずぐに私を見た。


 嘘はつけない。


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