恋するplants


 「どこ行きますか?」


 人の多い通りに出ると、隣を歩く桂さんに訊ねた。


 「カラオケ」


 桂さんは悪戯っぽく笑うとあっちと指を差した。


 桂さんの指した方を見ると雑居ビルの3階にカラオケチェーン店の看板が見えた。


 「私、いいです。歌へただし・・・聞かれるの恥ずかしいです」


 「ストレス溜まったときはカラオケに限るって。大丈夫、俺もヘタだし」


 桂さんの笑顔につられてへらっと笑う。


 決定!と言わんばかりに桂さんは私の手を引いた。





  ★

 



 就寝前、ベッドでゴロゴロ寝返りを打つ。


 昼間の桂さんの歌声が耳に残っていた。


 「ヘタだから」って言ってた桂さんは嘘つきだ。


 桂さんは歌がとても上手かった。


 普段話してる声は低いのに歌う声は音域が広く、高音もよく出る。


 ビブラートのかかったバラードについ目を潤ませていると、「どうしたの?」と歌い終わった桂さんに真顔で聞かれた。

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