恋するplants


 手を切ってしまった。


 蛇口を手探りで探し、指先を水で洗う。


 「どうしたの?」


 懐中電灯の光を向けて、桂さんが訊ねる。


 「包丁に触っちゃったみたいです。手、切っちゃいました」


 「大丈夫?」


 桂さんが駆け寄り手元を照らしてくれた。


 キッチンの棚にあったキッチンペーパーを取り、水気を拭く。


 「血が止まらないな・・・」


 そう呟くと桂さんは私の指を口に含んだ。


 桂さんの温かい舌が私の指に触れる。


 桂さんのつけているコロンの爽やかな香りを近くに感じて、胸がドキドキしてくる。


 私の心臓、ドキドキしないで。


 桂さんに気付かれちゃう。


 「血、止まったみたい。絆創膏持ってくるから」


 唇と離すと、桂さんは自分の部屋へと向かった。


 暗闇にもだいぶ慣れてきた。


 カーテンを開けると街灯はついていた。


 このマンションだけが停電になっちゃったのかな。


 相変わらず、突風と雨は続いている。

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